Escape ~殺人犯と私~
さんの手前に用意してある食事の内容と位置を説明して、お婆さんにお箸を手渡した。



「緋央、先に食べな?」


無表情で優しい口調の少年には、慣れそうにない。



全く食欲は無いけれど、「いただきます。」と呟きながら、箸を手に取った。



お婆さんには、遠慮がちな性格に思われてると思う。



簡単な洋食しか作らない私は、日本人らしい朝食なんて久しぶりだった。



ご飯に味噌汁、焼き魚に漬け物。そして煎茶。



少年が調理まで出来る事に驚きながら、少年を見ていた私は

ぽっ。と一つの疑問が浮かんだ。

少年はワイシャツにセーターに学生ズボンを履いてて、昨日と同じく制服姿だった。



学校に行くのかと思ったけど、今日は学校が休みのはず。



そういえば昨日も、シャワーから上がってから制服を着てた。



着替えが無いらしい。そう気付いた時、お婆さんが

「半年前に初めて会った」

と、言ってた事を思い出した。



親戚だと思っていたのに、予想は外れていた。



二人は他人だったんだ……。



だから、このリビングにも脱衣場の前の部屋にも

少年の物が一つも無いんだ。
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