Escape ~殺人犯と私~
、最初から私の名前を知ってたうえ、私が独り暮らしている事まで知ってた。



生徒手帳に住所があるけど

昨日私が気を失った後に、まさか家に行った訳ないだろうし…。



私は、少年を手伝うと見せ掛けてキッチンに向かった。



聞きたい事が山程あるのに、私は聞く事ができないでキッチンの入り口で立っていた。



流し台で食器を洗っている少年の後ろ姿を見ながら

手伝うために近寄るのも怖く、話し掛ける事すら出来なかった。



少年に植え付けられた恐怖は、DV彼氏と引けを取らない程だったから、本能的に拒否反応が出ていた。



そして、結局どうする事も出来ずに立ち去ろうとした時



「見たから。」



少年の呟いた言葉に、私は足を止めて振り返った。



「メール。」



振り向きもしないで、少年が言った。



メール……?

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