Escape ~殺人犯と私~
先手をついて私を逃がさないなんて

さすがは優秀校の生徒と感心しながら


水の滴るスカートとワイシャツ、セーターを絞ってリビングに戻った。



「まだ乾いていないでしょう?」



私に心配気に問いかけるお婆さんの横で

少年は水を汲んできたポットを設置していた。



私は雨が降ってた事を伝えながら、屋根付きのベランダを借りようして

びしょ濡れの制服を片手に、部屋を見回してると

少年が振り返った。


「雨?気付かなかった。しかも今朝、俺がお茶こぼした事言ってなかったね……」



本当ごめん。

と、何度も私に告げる。


冷たい表情をした少年の、感情の籠もった言葉。



ちなみに、制服にお茶を零したのはお婆さんじゃなくて

少年だった。




少年は私の持ってるずぶ濡れの制服に触れた。



「雨が染みてるね。……ほんとにごめん、もう1回洗い直すから貸して?」



私に有無も言わさず制服を奪って、脱衣場に持っていった。



困っている私に、すかさずお婆さんが口を開く。



「ごめんなさい、
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