Escape ~殺人犯と私~
臆病者だから……声が震えた。
そして、目をつぶろうとした
その時
ドスッッ……
私の長い髪が
数本、パラパラと散った。
ナイフが刺さった……
ナイフが壁に突き刺さっていた。
でも……痛くない……
ナイフは
私の髪を掠めただけだった。
首を解放された私は、そのまま腰を抜かして
壁を伝って床に座り込む。
本当に
刺されたかと思った。
言葉と矛盾した事を考えながら
ビビリな心臓のある左胸に手を当てる。
心拍数が上がったまま、治まらない。
放心状態の私を見下ろしたまま
少年は唇を開いた。
「望みなんか叶えるか……」
必死に気を落ち着かせていた私は
冷たい視線を感じて
少年を見上げた。
「……苦しめ続けてやる。」
少年は、私に怒りの矛先を向けて
恨みをぶつけるように、私に告げた。