Escape ~殺人犯と私~
あえず鎖に手をかける。



何故ベッドに拘束されたのか、嫌な予感を拭いききれず、両手が震えてしまうけど

あえて冷静を装って、南京鍵を引っ張ってみる。


ビクリともしない。



ベッドの脚に曲かれた鎖に付いた南京鍵も、しっかりと鍵がかかっていた。



冷たく重い金属に束縛されていると、 言い知れぬ恐怖が湧いてくるのは

昔の拷問などに金属が用いられていたからか。



私は震える両手を握り締めて、心を落ち着かせて

鍵を持ってるだろう少年の後ろ姿に視線を向けた。



少年は寝てるらしく

私が鎖を鳴らした音にすら振り返らない。



この鎖は長めに留められていて

少年の居るソファーにまで行ける長さがあった。

きっと少年は、この鎖の鍵を持ってるはず。



私は不安に満ちた表情で
ゆっくりとベッドから降りた。




その時



ジャラッ。

ベッドから鎖が落ちた音が、室内に響いて


私は、背筋を凍らせた。


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