特等席
「でもさ、毎回言うけど、彼方の優しさは優しさじゃないからね。好きになれなかった時、彼女たちが可哀相じゃん。」
「んー、わかってるけど。断って泣かれたらめんどくさい」
「あんたって最低」
彼方から初めて彼女の話聞いたのは、確か中学二年生のとき。
その時も話の内容は、ほとんど同じ。だけど、違ったのは告白されたーって焦ってる彼方がいたこと。
あのときは、彼方があまりにもてんぱってるから、あたしまで焦った気がする。
結局、彼方が好きになれなくて、態度が友達と一緒だったから彼女が別れを告げて終わり。
そんであたしが、優しさじゃないからね。って言ったら彼方が納得して、次告白してくれた子を断ったら…
「酷いよぉー…」
って言われて、泣きだされて、しかも人がたくさんいる場所で、彼方が悪者になっちゃったんだ。
「彼方、言っとくけど、中学のときのあの事件は、まれだからね。あんな人、あんまいないよ?」
あの事件がきっかけで、彼方は告白を断らなくなっちゃったんだ。
でもそれって絶対、相手にとっても彼方にとってもいいわけがない。
「あれは最悪だったよなー。あんときほど日向に感謝したことねーな。」
「大袈裟だよ。」