特等席
あのとき、彼方が悪者になっちゃってだけど、あたしにはそれが信じられなくて…
呆然としてる彼方に話を聞いて、あたしはみんなに言ったんだ。
『彼方は悪くない。彼方を悪者にしないで』って。
もちろん泣いてた彼女には嫌われちゃったけど、あたしの発言に周りは納得してくれた。
彼方が酷いことするわけない、って。
「日向が言ってくれなかったら、俺、多分ずっと悪者だった」
「そんなことない。あたしはなにもしてない。少し自分の意見を言っただけ。すぐ周りが納得したのは、彼方が信頼されてたから。」
彼方が信頼されてなかったら、あたしが何を言っても、誰も信じてはくれないはず。
だからあのとき、周りが納得してくれたのは、今まで彼方が作ってきた人望があったから。
「日向ってば、照れ屋ー(笑)」
「張り倒されたいの?(怒)」
「んな、怒んなよυ」
なら、からかうなよなー。
「まっ、彼方がいいならいいけどね。なんかあったら言いなよ。相談相手くらいなら、なるから。」
「日向、ありがとな」
「いーえ、大事な幼なじみだからねー(笑)」
彼方に彼女ができよーと、あたしと彼方の関係はずっと同じ
1番、安心できる場所。1番、素で話せる相手。
それが彼方。
そして多分、彼方にとっても、それはあたしだ。