特等席




学校につき、駐輪場に着いた。





自転車からおりて、彼方が鍵をする。





「毎日思うけど、2ケツって楽だよね」



「お前は乗ってるだけだからな」



「まー、そうなんだけどね。でもあたしが2ケツするのって彼方だけだよ。」





なんか毎日乗ってるせいか、彼方の自転車で、彼方の運転以外は乗りたくないんだよね。





「でもわかる、俺も日向以外乗せたくないし」



「あたしも、あたし以外がそこに乗ってほしくない」



「乗せねーよ、俺も嫌だ。だからこの場所は、日向の特等席だな」




にっこり笑う彼方に、あたしもつられて笑う





「うん、あたしの特等席。他の誰にもあげない。」



「だな、俺も乗せない」



「あはは、そーいえば約束したよね。小学生のとき」





小学生のときも、あたしと彼方は2ケツをしていた。





でもあのときの自転車は、小さくなって捨てちゃったけど。





彼方は言ってくれたんだ。




『日向以外乗せないよ、約束』




可愛い手で、指切りした。





あのときの約束は、まだ破られていない。





「彼方、可愛かったな」



「今も可愛いだろ?(笑)」



「うん、聞こえなかった(笑)」



「おい!」





ずっとずっと、彼方の自転車の後ろはあたしだけの特等席だ。





< 8 / 15 >

この作品をシェア

pagetop