特等席
学校につき、駐輪場に着いた。
自転車からおりて、彼方が鍵をする。
「毎日思うけど、2ケツって楽だよね」
「お前は乗ってるだけだからな」
「まー、そうなんだけどね。でもあたしが2ケツするのって彼方だけだよ。」
なんか毎日乗ってるせいか、彼方の自転車で、彼方の運転以外は乗りたくないんだよね。
「でもわかる、俺も日向以外乗せたくないし」
「あたしも、あたし以外がそこに乗ってほしくない」
「乗せねーよ、俺も嫌だ。だからこの場所は、日向の特等席だな」
にっこり笑う彼方に、あたしもつられて笑う
「うん、あたしの特等席。他の誰にもあげない。」
「だな、俺も乗せない」
「あはは、そーいえば約束したよね。小学生のとき」
小学生のときも、あたしと彼方は2ケツをしていた。
でもあのときの自転車は、小さくなって捨てちゃったけど。
彼方は言ってくれたんだ。
『日向以外乗せないよ、約束』
可愛い手で、指切りした。
あのときの約束は、まだ破られていない。
「彼方、可愛かったな」
「今も可愛いだろ?(笑)」
「うん、聞こえなかった(笑)」
「おい!」
ずっとずっと、彼方の自転車の後ろはあたしだけの特等席だ。