治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


訳が分からないといった感じの眼差しを向ければ、耳打ち際、小さい声で彼が話す。


「魔術の“独り歩き”だ。普通なら術者が意志放棄をした時点で、何もかもが無に還るが。

この場所はいけない。死者の世界――冥界と瓜二つの場所では、召還された魂も定着し、住み続ける。

本物のグールが出来上がったな。ただ徘徊をし、適当な物があったら喰いあさる俗物だ」


耳にある髪が彼の吐息で揺れる。

囁めくアルト声で心拍が上がる前。


「っ、な……」


声が出てしまった。

グールの群れが泣く彼女にたかり、近付くなりに。


「ママ、ママ。っ、うあっ!」


彼女を叩いた。

すかさずに黒人形がアリスちゃんに覆い被さって守るも、二十もある手にボコボコにされていく。


リンチを見ているようだった。


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