治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
【帰ります、帰りたい。ラグナ様のお城に帰りたい。だから道をあけて、つなげて、通して下さい】
「手、繋ごうか」
「………」
「クッ、素直だね。俺が握っているんだ、安心していいよ」
【ラグナ様、アリスを通して下さい】
アリスの詠唱が終わりとなったか、変化があった。
指輪が、沈んだ。
水面(みなも)に定着していた指輪が初めて沈み。
「っ……」
私の足も沈んだ。
自然界の摂理が一気に戻ってきたよう。
水に入れば沈む。
間もない、瞬間だった。頭まで沈んだこの状況は。
思わずもがくが。
「大丈夫」
耳元で声がして、握られた手に強い力がこもった。