治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


水の中で声がしたもんだから、驚いて目を開けて――心臓が止まるかと思った。


使い古された驚愕の例えだが、息を止めていた私にとってはびっくりが混じってはそうもなる。


水の中。
そのイメージが完全なくなる。


シュークリームを食べたつもりが、中身はわさび入りだったという予想外のびっくり並みだ。



水じゃなかった。
逆さまに広がるある場所。


息も出来て、水の中という重さがない。


高いところから落ちたような状態は逆転の世界を目に映すが――まばたきを一度したのち、世界は普通に戻った。



「あ……」


膝をつく。
手を地につけるわけだが。


「な、に……」


これと、いつの間にか自分が地の上にいたと知る。


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