治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
私に駆け寄る小さな子と、私を立たせる大きな人。
ふらふらと足元がおぼつかないのは、まだ驚きが残っているからなのか。
赤いバラの匂いが鼻をつく。風が吹けば、花びらが数枚私の服に当たった。
花びらを手にし、感触を確かめ、深く息をする。
全てが、本物だった。
本の中の世界でしかないような、幻想的楽園に私は立つ。
古びた城に、広い庭園。
城は使用人百人いても足りないほど大きく、庭園に至っては何百いようとも、この数万はゆうに超えるバラたちをここまで綺麗に育てられはしないだろう。
バラを踏まないようにか白いタイルの道はあるも、それ以外の地はバラとなる不思議な空間。
こんなにも花があれば、一、二本は枯れていそうだが、皆同じように綺麗に生えていた。