治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
白いタイル道を歩く。
足元を見て、辺りを見てと、先ほどからどこに目線を置けば分からなくなっていた。
凄すぎる。
世界にはこんな場所があったとは。
「本当に、ここってどこなんですか」
「さっきも言った通りに分からない。東にあるのか、西にあるのかさえも。気性とか気温とか、月の移り変わりで場所を特定しようにも。
ここはね、止まった空間なんだ」
「止まった……?」
「昼間が来ない。月も夜空を移動しない。気候も変わらず、気温すらも。
世界が止まったような場所なんだよ。ずっとこのまま、風景も変わらず、花の一輪すらも枯れたりなどしない」
「それって、本当に私たちがいる世界なんですか」
「面白いことを聞くなぁ。どうだろうね、俺たちが思う世界の形と比べれば、随分とここ“現実離れ”をしている。
もしかしたら、道を通るときに別の世界に来たのかもしれないし。いや、世界は広いのだからこんな場所があってもおかしくないと思うのも自由。
推測が出来ず、憶測ばかりが出てくるばかりだ。俺としては、ここは“こういう場所”なんだと深くは考えていないが」