治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
割り切っているような彼は、この場所に慣れたのか。
夜のままの住処。
世界が止まったではなく、時間が止まっていると思うが――どこからか吹く風が、花を動かし、制止を否定する。
本当におかしな場所だった。
西も、東も分からない。
前に彼に教えてもらった、北星を探してみたけど、なかった。
星がない。
月は堂々と出ているのに、小さな星が一つもなかった。
驚きの吐息が出る。
はあ、と息をして、呼吸を整えた。
ありすぎた、見なきゃいけないものが。
多すぎた、見たこともないようなものが。
キョロキョロと辺りを見回しながら、アリスについていく。
やがて。
「ラグナ様っ、ただいまっ」
アリスが駆けた先。
忙しない私の眼球が初めて止まるような“美”がそこにいた。