治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


「な、なんでもっ。そんなに気を使わなくてもっ」


かみかみでやっと言えば、ラグナロク様は少し張り合いがないといった様子で、準備を始めた。


「マトリ、ヨーシカ。二秒で準備しろ。テーブルは余がセットしようぞ」


変な名前だと思ったのは秘密だ。


どっちが、マトリでヨーシカか分からないし、区別もつかない双子だが。ラグナロク様が言うなり、深くお辞儀をして……消えた。


動きが早すぎて見えないのか、はたまた本当に消えたのか。


呆然と見ていれば、ラグナロク様がテーブルのクロスに触れていた。


細い指でなぞり、たったそれだけで。


クロスが、伸びた。


ここで私の勘違いを知る。


椅子があるならテーブルもあると思うのが普通。


クロスだってあった、クロスの上にはティータイム一式があった。


ならばそこにテーブルがあると思うのは自然だったのに、クロスの下、そこには何もなかった。


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