治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「余も、そなたらの関係に口を出すつもりはない。当人の問題を他人が教えてやることほど、野暮なことはなかろう。
いずれ、そなたも気づく。大切にしてやることだ、可哀想な恋人を」
「何を訳の分からないことを。可哀想な恋人?ユリウスは俺と一緒で嬉しいはずだ、可哀想などと哀れむ生活は送らせてはいない。
毎日のように愛し合い、仲むつまじくどころか、仲が良すぎて一心同体になった俺たちに不幸など存在しない」
愛を話す男に、やれやれとラグナロクは笑った。
――こうしていることを、ラグナロクは楽しんでいたのだ。
自分が死にそうになっていても、“珍しいこと”だと愉快に見られるのは――死ぬことはないとラグナロクは知っているから。
己が体だ。長い年月を生き、これから先も生きやすくするためにいじってある肉の器。
思考する頭が粉砕されない限り、死にはしないだろう。
ラグナロクが死ねる方法は一つだけ。
脳死、脳が死んだ時に初めて彼女は“死んだ”と自覚出来るのだろう。もっとも、やったことはないので、もうしかしたらうっかりと生き返ってしまうかもしれないが。