治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「シ、シブリールさん」
「ん、ああ、ごめん。見た目悪いよね、これ。君まで怯えさせちゃったか」
謝罪をされ、彼は私が怯えていると知るなり炎を消した。
指を鳴らせば、きれいに消えてみせた炎。
辺りが一気に暗くなるわけだが――炎(化け物)に気を取られていて、気づかなかった。
腰を抜かしている男たちに。
私たちの前にいた奴らの大半が逃げ腰だった。
後ろにいる奴らなんか、炎が消えるなり悲鳴をあげて逃げるのだが。
「逃げるな、ハエ。まだ俺は楽しめていない」
彼はそれを許さなかった。
逃げる奴らに目線を置き、指差す。
差す指の形が独特だった。人差し指、中指を突き立てて、短剣でも作るようにそれを。
【虚空、流れ、鋭く】
闇を撫でた。
あの指の形が短剣ならば、何かを切ったような素振り。
架空の切り裂きのはずだ。
――なのに、どうして。
「う、わあ!」
「落ちるぞ!」
木が倒れたのか。