隣の先輩
 知っている人で自分を案内できるとしたら父親だが、今は仕事中で、そうした私用で電話をかけることはできなかった。


 引っ越して三日目。こうして一人で出かけるどころか、家から出たのも初めてだったのだ。そのお店のありかを辺りを見渡しても人の気配もない。


時折、車が傍を駆け抜けていくが、車を止めることができるわけもない。


ため息混じりに手元の携帯でどうにかできないかと思っていたとき、低い声が優しく届く。


「どうかしましたか?」
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