My fair Lady~マイフェアレディ~
「ふー」
俺は溜息のような息を吐き出した。どこか緊張していたようだ。
だが、そう気を抜いたのを見計らったかのようなタイミングで俺の耳に呻き声が入ってきた。
「うぅ…うー…ぁ…がぁ…」
俺は脳裏に今日の朝に会ったお婆さんの話を思い出していた。呻き声…噂の亡霊か…?!
俺はまさかの展開に涙を浮かべたまま腰を抜かしてしまった。
引きつる喉に声すら出てこなかった。
俺はぎゅっと自分の身柄を抱きこみ。その呻き声のする方向を凝視していた。
体がガクガクと震えている。胃がどっと重くなる。冷や汗が次々に出て来る。だが、そんな事を意識する余裕はなく、隣の野苺の入った籠がカラッと音を立てて傾き野苺を少し溢していた。
呻き声はどんどん自分に近づいていた。
次第に草を踏む音まで聞こえてきた。
みし、くしゃ、どさ…っとなんとも奇妙な音だ。フラフラと揺れ動いているのだろうか。
まるでゾンビが何ども倒れてもまた歩き出しているかのような。そんな感じだった。