My fair Lady~マイフェアレディ~
部屋に入って俺は言葉を無くした。そして思わず手を口に当てる。脳を掻き回す様な酷い異臭だった。

部屋は恐らく隣の部屋と同じ大きさだと思われる。
だが、まるでその部屋は狭かった。

それは、夥しい数の拷問道具で埋め尽くされていた。

剥き出しの刺は血がこびり付いているのか、乾燥して黒い塊に見え、部屋中に血痕がまるで絵の具で壁一面に殴り塗ったかのように飛び散っていた。
ねっとりとした粘着のある音、どろりと固形になりかけている血液。

拷問道具など、今まで見たこともなかったが、目の前のどれもが血がついていて、それでいて殆どが鋭い凶器をギラつかせていた。

壁には刃物や釘やノコギリなど、大工で使うようなものがズラリと並んでいた。他にも小道具が色々あったが何に使うものかわからない。

一番目立つのは拘束具。板の上に寝かされてそのまま動けない状態になるのだろう。
まるで人体実験のようだ。

そして少し半開きになっている。大きな棺みたいな金属の筒。それは縦長で大人二人が入れそうな感じだった。その下には液体が糸を張って流れていた。

俺は血を含んで黒くなった木の椅子に座らされて椅子ごとグルグルに縛られてしまい。彼とバケモノを見ているしかなかった。

彼は、俺の視線の先に気付いて「この中が気になるのか?」と聞いてきた。

それは俺がつい先程まで見ていた。金属の筒。やはり大きな棺に見えた。

彼はニタリと笑うとゆっくりその扉を開いていく。
扉はギッギッギと嫌な音を響かせていた。ボロボロと乾いた何かが零れていく。

扉を開ければ開ける程、ねっとりとした液体が流れ出す。その色は赤…よりもドス黒く、黄色っぽいような透明な液体も混ざっていた。
白い何かがポトリと落ちて来た。それは何かわからなかった。彼はさらに扉を開ける。

そして、ぐちゃ、ぼとぼとぼと…という音と共に流れ出てきたのは…。
一瞬、理解できなくて。俺は固まった。しかし、最後にゴトリと出て来た人の足に初めに出て来た真っ赤なぐちゃぐちゃなものが何かわかって俺は口の中がすっぱいような感覚に襲われた。





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