さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

事実、レイラのまとった衣はおせじにも綺麗とはいえず、

ほころびを繕って何度も洗濯を重ね、とうに色あせている。


盗賊などというぬれ衣を、一体どうして擦り付けられたのだろうか。



・・今日だって、隣町に新しい家を建てるのに人手が必要だからって、

お手伝いに行っていたのに。



己の問いかけにはっとする。


数ヶ月に一度の仕事。

留守番役の自分。

しかも決まって出かけるのは夕方になってからで、帰宅は夜半や明け方だ。

父は、かつて大工をしていたが、事情があって街にいられなくなったと聞いている。

そんな父を慕って共に暮らすリュートとホック。


どんなに頼んでも、もう少し大きくなってからと、仕事には決して連れて行ってはくれなかった。


父が器用なことは疑いようがない。

日常生活に必要なものは、ほとんどが父の手作りだ。


だが、彼らが家を建てている現場を見たことはなかった。




< 15 / 366 >

この作品をシェア

pagetop