さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
事実、レイラのまとった衣はおせじにも綺麗とはいえず、
ほころびを繕って何度も洗濯を重ね、とうに色あせている。
盗賊などというぬれ衣を、一体どうして擦り付けられたのだろうか。
・・今日だって、隣町に新しい家を建てるのに人手が必要だからって、
お手伝いに行っていたのに。
己の問いかけにはっとする。
数ヶ月に一度の仕事。
留守番役の自分。
しかも決まって出かけるのは夕方になってからで、帰宅は夜半や明け方だ。
父は、かつて大工をしていたが、事情があって街にいられなくなったと聞いている。
そんな父を慕って共に暮らすリュートとホック。
どんなに頼んでも、もう少し大きくなってからと、仕事には決して連れて行ってはくれなかった。
父が器用なことは疑いようがない。
日常生活に必要なものは、ほとんどが父の手作りだ。
だが、彼らが家を建てている現場を見たことはなかった。