さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
身震いがして、レイラは唇を噛み締めた。
嘘だ、と大きな声で叫びたかったが、
お腹の真ん中に溜まったまま、どうしても音にならない。
ジャリ、と靴が地面を滑る音が響いた。
周囲にいた男たちが、道を譲る気配がする。
近づいてきた男は背の低い、ひょろっとした男で、
髪も薄く、父よりもずいぶん老けて見えた。
「盗賊は縛り首と決まっている」
その男は再び繰り返し、最後に付け足した。
「ただし、お前が私の娘としてリア国へ行くというなら、家族の命は助けてやってもいい」
「え?」
「お前が、ソリャン王子のもとへ嫁ぐというなら、
その命、助けてやろう」
レイラには、突然出てきたその名前が誰のものなのかわからなかった。
けれども、選択の余地はなかった。