春夜姫
声に出してから、夏空は自分の体が震えているのを感じました。
夏空には母が二人います。
夏空を産んだお母様は城内で亡くなりました。そして現れた女性が、父王の新しい后となり、夏空のお母上となりました。
お母上は、実のお母様を失って気落ちしていた夏空たち三人の王子を励まし、慰めて、学問に向かわせました。世の中は広く、複雑であり、空は果てしなく広大で、計り知れない。その中にいくつかの普遍的なことがあって、その一つは、命ある生き物は生まれ、そして死ぬということ、命はつながっていくこと。人もその生き物の一つであるということ。
古今東西の書物を紐解くだけでなく、色鮮やかな花や、賑やかに鳴き交わす鳥、美しい夕暮れの空を見ながら、お母上は王子たちに説きました。
一番上の王子は、何も言わずに頷きました。お母様が亡くなったとき、その寝台の直ぐ側で王や大人達と共に最期を見届けたのは、三人の兄弟の中でこの王子だけでした。
真ん中の王子は、「はい」と言って頷きました。お母様が亡くなったとき、真ん中の王子は自分の部屋で声を上げて泣いていました。
一番下の王子――夏空は「うん」と言いましたが、お母上の話よりも、西の夕空のあまりの美しさに見惚れていました。お母様が亡くなったとき、夏空はそれが最期だとはわかりませんでした。明日も会えると思ってお母様におやすみを言って、夏空は自分の部屋で眠り、お母様は二度と目覚めませんでした。
「なぜ母上が、あんなに禍々しいものの先頭で、まるでそれらを引き連れているように見えたのでしょう」
夏空には母が二人います。
夏空を産んだお母様は城内で亡くなりました。そして現れた女性が、父王の新しい后となり、夏空のお母上となりました。
お母上は、実のお母様を失って気落ちしていた夏空たち三人の王子を励まし、慰めて、学問に向かわせました。世の中は広く、複雑であり、空は果てしなく広大で、計り知れない。その中にいくつかの普遍的なことがあって、その一つは、命ある生き物は生まれ、そして死ぬということ、命はつながっていくこと。人もその生き物の一つであるということ。
古今東西の書物を紐解くだけでなく、色鮮やかな花や、賑やかに鳴き交わす鳥、美しい夕暮れの空を見ながら、お母上は王子たちに説きました。
一番上の王子は、何も言わずに頷きました。お母様が亡くなったとき、その寝台の直ぐ側で王や大人達と共に最期を見届けたのは、三人の兄弟の中でこの王子だけでした。
真ん中の王子は、「はい」と言って頷きました。お母様が亡くなったとき、真ん中の王子は自分の部屋で声を上げて泣いていました。
一番下の王子――夏空は「うん」と言いましたが、お母上の話よりも、西の夕空のあまりの美しさに見惚れていました。お母様が亡くなったとき、夏空はそれが最期だとはわかりませんでした。明日も会えると思ってお母様におやすみを言って、夏空は自分の部屋で眠り、お母様は二度と目覚めませんでした。
「なぜ母上が、あんなに禍々しいものの先頭で、まるでそれらを引き連れているように見えたのでしょう」


