春夜姫
王様は、小瓶を開けることが出来た者は春夜姫と結婚することができる、というお触れを出しました。
国の外にもそのお触れは知られていき、たくさんの人が小瓶を開けようとしました。見上げるような大男に、物乞い、風来坊。旅人に、勇者。
ある者は小瓶を踏み潰そうとし、ある者は魔法の呪文を唱えました。煮えたぎる油に入れてみましたし、蓋に紐をくくり付けて百頭の馬に引かせもしました。しかし、誰も小瓶を開けることはできません。
年月は虚しく過ぎて、春夜姫はますます美しくなりました。腰まで伸びた豊かな髪、ぱっちりとした双眸は穏やかで、常に優しい笑みを湛えています。
春夜姫を見ると、みんな思いました。
「ああ、何と美しい姫だろう」
そして更に思うのです。
「おいたわしや、声が出ないとは!」
この冬に積もった雪が溶けたら、春夜姫は十七歳になります。