春夜姫

「こっちへおいで、春夜」
 王様が春夜姫を手招きしました。いつも優しい王様が眉をひそめ、笑みを絶やさないお后様が泣き腫らした目をしています。

「どうなさったの、お母様」
 春夜姫はお后様を心配そうに見上げました。お后様は春夜姫に抱きつき、また静かに涙を流します。

 春夜姫は不安そうに王様を見上げました。今日は春夜姫の誕生日なのに、二人は全く嬉しそうではないのです。王様は春夜姫の髪を撫で、膝を付いて春夜姫と目線を合わせました。

「春夜、私はいつも言っているね。破って良い約束はない、と」

 その言葉を聞くと、お后様が一段と強く姫を抱き締めます。春夜姫はしっかりと頷きます。
「ええ、お父様」
「私とお母様はお前の生まれる前に、私たちのためにある約束をしたんだ」
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