春夜姫
春夜姫のきょとんとした表情に心を痛めながら、一層優しく、王様は春夜姫の髪を撫でます。
「子どもを授かる方法を教えてくれた者と、約束をしたんだ」
「どんな約束ですか」
「ああ、私の可愛い春夜」
お后様が顔を上げました。涙を流しながらも、春夜姫の瞳を真っ直ぐに見つめます。
「お前をあの、薄暗い森の中へ行かせねばならないのです。森の奥に住む魔女に会いに行くのです」
春夜姫は首を傾げました。
「魔女にお会いするのですか」
「ええ、そうよ」
「それだけなのに、なぜお母様は涙を流すの。森なら、よくピクニックに行くでしょう。素敵なところだわ」