春夜姫

「誰だい」
 何もしていないのに、中から声がかかりました。春夜姫はびっくりしてしまいましたが、ゆっくり息を吸い、しっかりと答えます。

「春夜です、魔女のおばさま」
「ああ! 待っていたよ。さあ、お入り」

 その声はとても嬉しそうでした。春夜姫はほっとして、それから魔女に渡すように言われた宝石の袋を握り直しました。

 春夜姫が家に入ると、そこは外から見たのとは全く違う、明るくて暖かく、お茶とお菓子の匂いが漂う素敵なところでした。魔女の顔も穏やかで、春夜姫はとても安心しました。魔女はお茶を出して言いました。

「私は、お前の両親と約束をした」

「はい、聞いておりますわ。わたしが初めにおばさまにあげたものを、おばさまはわたしからもらう、と」
 魔女は満足そうに頷きました。
「さあ、いただこうか」
「これを」
 春夜姫はテーブルの上に、宝石の袋を乗せました。しかし、魔女はそれをやんわりと払いました。

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