― 君 色 星 ―
「ホンマに香織は東京の大学に受かって、上京してもうた。上京してからは、ますます香織との距離が開いてしもて…」
中村さんは、軽くコーヒーをかき混ぜながら話をしていた。
「俺、ホンマにアホやから、香織にそんな態度取られるまで全然気付かんかったんですわ。香織は俺のこと、『兄さん』やなくて、それ以上に見とったなんて…」
「…香織さんから告白はされてないんですよね?」
俺は落ちかけたメガネを指で押し上げて、中村さんを真っ直ぐ見据えた。
「はい。俺、香織なら妹やし、祝福してくれるゆうて勝手に思い込んでました。カミさんにそれ相談したら、『それ絶対健吾に惚れとるんや』って言われてしもて」
「なるほど。女性の視点ならではですね」
「ええ。香織のこと、そんな風に見たことなかったもんやから、たまげてしもて。…でも、今日はちゃんと伝えよう思て来たんです」