龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
 後藤は驚いて目を丸くした。こんな大法螺を夢見ている男が日本にいるとは思わなかったからだという。この壮大な夢の前では、壤夷や佐幕や薩長連合などちっぽけなものに見えてきた。ましてや土佐藩士にもどれ……などというのはまさにちっぽけだ。
「後藤さん。これはどうじゃ?」
 龍馬は紙に墨で書いた。
「海援隊」……
「は?」
「意味は、海から土佐藩を援ける、ということじゃ。海とは、海軍、貿易じゃき。海援隊は土佐藩を援けるが、土佐藩も海援隊を援けるがぜよ」
「つまり同格ということじゃきにか?」
「ああ、そうじゃ」
「じゃきに、藩主とおんしが同格なのか?」
「あたりまえだ。アメリカでは身分制度などない。大名も殿様も天皇もない」
「声が大きい! 危険な思想じゃきに」
「その為には倒幕し、大名もそののちなくす」
「大名を? 藩をなくすちゅうがか?」
「時期がくれば……大名も藩もなくす。皆が平等な日本にしたい」
「おのれは……すると龍馬。おんしの勤王は嘘か? 天子さまもいらんと?」
「そげんこついうとらん。天子さまは別じゃ」
 後藤は龍馬という男が怖くなってきた。
 意見があわない筈だ。
 後藤は龍馬のいう「海援隊」を土佐藩の支配下におこうとし、龍馬は藩と同格のかたちでいこうとしている。            
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