龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
『脱藩の準備』を龍馬はしはじめた。
とうぜんながら脱藩には金がいる。刀もほしい。
龍馬の家は土佐きっての裕福な武家だけに、名刀がしまってある。だが、兄の権平が脱藩を警戒して、刀箪笥に錠をして刀を取り出せなくしていた。
「どげんするきにか…」
龍馬は才谷屋を訪ねた。才谷屋は坂本家の分家である。坂本家のすぐ裏にあって、こちらも商業を営んでいる。北門が坂本家、南門が才谷屋の店口となっていた。
「伯父さんはいるきにか?」
龍馬は暖簾をくぐり、中にはいった。
「ああ、坂本のぼんさま」
番頭は用心深くいった。というのも、権平に、”龍馬が金か刀の無心に来るかもしれぬが、あれのいうことに応じてはならんぞ”と釘をさされていたからだ。
「あるじはただいま留守でごります」
「伯母さんは?」
「いらっしゃいますが、何やら気分が悪いとおやすみでございます」
「なら、刀蔵の鍵をもってきてくれんがか」
「……それは」
「本家のわしが頼むのだぞ。わしは奥で酒飲んじゅるきに、持ってきとうせ」
どんどん入りこむ。
やがて夕方になった。
「おや、めずらしい。龍馬じゃないかが」
お市おば(龍馬の祖父の従弟の妻)がいった。その姪の久万、孫の菊恵をつれて朝から遊びにきていたが、龍馬をみつけると笑顔になった。
しかし、お市おばも龍馬の算段を知っている。……脱藩はなりませぬ!
散々説教するが、龍馬は(何を寝言ば、ゆうちゅるがか)と思いながら頷いているだけだ。やがて伯父の八郎兵衛が帰ってきた。
「伯父さん。刀ば見せとうせ」
「あっ、龍馬がか」
龍馬をみただけで顔色を変えた。本家からの情報をすでに掴んでいたからだ。
「