龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~

「野心って何?」
「回天ですき。日本をいま一度洗濯するんじゃき」
「……わかりました」
「ほな、姉さん勘弁してくださるのんか」
「勘弁します。それにあなたが欲しがっている陸奥守吉行もわたくしからの贈物としてさしあげます」
「え? なんきに姉さんが陸奥守吉行もっちゅう?」
 龍馬は半信半疑だった。……陸奥守吉行というのは名刀である。
「これはわたくしが離縁したとき、前の夫(柴田義芳)からもらったものです。坂本家のものでも才谷家のものでもありません。あたくしのものです」
 龍馬はお栄姉さんより名刀をもらった。
 これが、お栄の不幸となった。
 龍馬の脱藩後、藩丁の調べで、柴田家の陸奥守吉行の一刀をお栄からもらったことが判明し、柴田義芳は激怒した。坂本家まできて、
「なぜそなたはわしの形身を龍馬にやったのじゃ?!」とお栄をせめた。
 お栄は、そのあと自殺している。
 天命としかいいようがない。天がひとりの姉を離縁とし刀を英雄に授け、そして自殺においこんだ。すべては日本の歴史を変えるために………

  土佐藩参政吉田東洋が、武市の勤王党の手で暗殺された。
 文久二年四月八日、夜、十時過ぎであったという。
 この日は、夕方から雨がふっていた。東洋は学識もあり、剣のうでもすごかった。が、開国派でもあった。そのため夜、大勢に狙われたのだ。
 神影流の剣で立ち向かったが、多勢に武勢、やがて斬りころされてしまう。
「吉田殿、国のために御成仏!」
 東洋は殺された。
  
< 32 / 115 >

この作品をシェア

pagetop