龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
 確かに、今までは戦国時代からは日本人どおしは戦わなかったがね、今は違うんだ。まったく冷や水たらたらだったよ」
 麟太郎は、四月四日に長崎を出向した。船着場には愛人のお久が見送りにきていた。お久はまもなく病死しているので、最後の別れだった。お久はそのとき麟太郎の子を身籠もっていた。のちの梶梅太郎である。
 四月六日、熊本に到着すると、細川藩の家老たちが訪ねてきた。
 麟太郎は長崎での外国軍との交渉の内容を話した。
「外国人は海外の情勢、道理にあきらかなので、交渉の際こちらから虚言を用いず直言して飾るところなければ、談判はなんの妨げもなく進めることができます。
 しかし、幕府役人をはじめわが国の人たちは、皆虚飾が多く、大儀に暗うございます。それゆえ、外国人どもは信用せず、天下の形成はなかなかあらたまりません」
 四月十八日、麟太郎は家茂の御前へ呼び出された。
 家茂は、麟太郎が長崎で交渉した内容や外国の事情について尋ねてきた。麟太郎はこの若い将軍を敬愛していたので、何もかも話した。大地球儀を示しつつ、説明した。
「いま外国では、ライフル砲という強力な武器があり、アメリカの南北戦争でも使われているそうにござりまする。またヨーロッパでも強力な兵器が発明されたようにござりまする」
「そのライフル砲とやらはどれほど飛ぶのか?」
「およそ五、六十町はらくらくと飛びまする」
「こちらの大砲はどれくらいじゃ?」
「およそ八、九町にござりまする」
「それでは戦はできぬな。戦力が違いすぎる」
 家茂は頷いてから続けた。「そのほうは海軍興起のために力を尽くせ。余はそのほうの望みにあわせて、力添えしてつかわそう」
 四月二十日、麟太郎は龍馬や沢村らをひきつれて、佐久間象山を訪ねた。象山は麟太郎の妹順子の夫である。彼は幕府の中にいた。そして、知識人として知られていた。
 
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