恋文

小さな炎

いつからだろう

私が彼をいとおしいと思い始めたのは


始まりは偶然だった

駅前の喫煙所

ここのところ失敗続き仕事のことを考えて、また月曜が来ることにうんざりしながら煙草に火をつけようとライターを取り出す

カチッ…

あぁ、もう。
なにもかもうまく行かない。

ライターまで。


その時無言で私の前に小さな炎が差し出された

慌ててイヤホンを外し顔を上げると、真面目そうな顔の、スーツを着た、細身でやや小柄な男がいた。

『あ、すみません、ありがとうございます…』

とりあえず火を借りると、煙草に火を付けた。


仕事帰りのような服装を見ると二十代半ばくらいだろうか

もう少し幼いようにも見える。


『何聞いてたの?』

首から下がったイヤホンを差して、彼は言った。

『NIRVANA』

『へぇ…』
少し意外そうな顔をして、こちらを見る。

確かに私の年頃の女子はあまり聞かないかもしれない…

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