魅惑のヴァンパイア
「どうしてお前がここにいる!? 汚らわしき血め! 早く出てお行きなさい!」


 さっきまで悲嘆にくれて泣いていたとは思えないほど、力強い声で怒りを露わにしていた。


 どんどんヒステリーに怒っていく王妃を見て、逃げるように部屋を出た。


「申し訳ございません。王はあなたの父上でもあるのに……」


 テイル大臣は、固く閉ざされた王の部屋の前で頭を下げた。


「いえ、いいんです。ほんの少し最後に見られただけで……」


 顔は王妃の体に隠れて見えなかった。


 けれど近くに行けたことで満足だった。


 おそらく自分は葬儀にすら参加できない身の上……。


ヴラドと王の思い出は少なかった。


 ヴラドが王宮から遠く離れた地で暮らすことになる前までは、王とはよく遊んでいた。
< 180 / 431 >

この作品をシェア

pagetop