魅惑のヴァンパイア
「お腹の子は元気に育っているようじゃな」


突然後ろから声がして、びっくりして振り返ったが誰もいない。


あれ?と思い、キョロキョロと見渡していると、「ここじゃ、ここじゃ」と、くいくいと袖を引っ張られ、下を見ると子供くらいの背丈の老婆が私を見上げていた。


「あなたは、あの時の……!」


「なんだ、こんなところに知り合いか?」


ピーターは物珍しそうに老婆を見ると、不敵な笑みを浮かべ、老婆とは思えない軽快な足取りで、あっという間に数十メートル先に行ってしまっていた。


「ゲン婆さん。あの方はああ見えて魔界一の産婆なんですよ」


 驚きで口をパクパクさせている私に、ラシードは誇らし気に言った。


「なるほど。子猫ちゃんの妊娠がどうして分かったのか謎だったが、こういうことだったのか」


「ゲン婆さんの他にも、各界に我々の仲間は潜んでいますよ。皆が知らないだけで」


「まったく、恐い連中だ」


 ラシードはカラカラと笑って、大鍋の横を通って寝室に向かう通路を案内した。
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