魅惑のヴァンパイア
そして二人はマントを翻し、颯爽と歩いていってしまった。


案内された寝室は、とても簡素なもので、シングルベッドに小さな机とタンスが一つ。


 部屋の大きさは6畳にも満たなかった。


 それでも、浅葱色のカーテンを開け、森の空気を吸い込むと心が和んだ


 やっと一人になれた安心感と、ずっと堪えてきた悲しさが混ざり合って、不思議な程簡単に涙が頬を伝った。


 なくしてしまった。何もかも。


 ヴラドと過ごした屋敷も、いつも側にいてくれたバドも。


 これから先どうなるか分からない。


 自分は死ぬかもしれないし、ヴラドは一生帰ってこないかもしれない。


 一人森の中で道に迷ってしまったかのような不安感を背負いながら、人前では決して泣くまいと、澄み渡る空に誓った――
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