魅惑のヴァンパイア
「ヴラド!」


 私が駆け出した時だった。


王妃の大きな顔が倒れるように、ヴラドの頭の上に落ちてきて、ヴラドの身体は黒い物体に完全に飲み込まれて、黒い物体の中に沈んでしまった。


 ヴラドの身体がなくなって、私は悲鳴を上げることさえできなかった。


ヴラドが消えた所からは、黒い液体が水たまりのように広がっていた。


 声を出すことができなかった。


息の吸い方を忘れてしまっているようだった。


 私は黒い水たまりを見下ろした。


それは、ブラックホールのようだった。


穴の奥には、何千、何万と骸骨が呻いているのが見えた。


 足が震えていた。


骸骨の中に入っていくのは、ためらわれた。


 でも……。


 私は大きく息を吸って、黒い穴の中に飛び降りていった。

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