戦場駆け征く
「―――邑丁?」


そんな場合ではないと思いながらも話し掛けていた。勿論陣の最前では、激しい攻防が続いている。此処は後ろの方だった。恐らく、戦いは此処まで及ばない。


「……漣犀」

間違いなく、それは邑丁だった。


胸を矢に貫かれ、ひどく出血している。口を開いた瞬間に咳込み、血を吐いた。

「…早く、戦いに、行け。…死ぬ、な」


もはやこうなっては、救う手立てはない。矢を抜けば血が流れて死ぬ。医者に見せる余裕も無い。


「邑丁!」

「…馬鹿が。お前は、生きて、帰るんだろう。…俺の…分まで、手柄―取って来いよ…」

邑丁はニコリと笑い、行け、と言った。
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