都会の魔女
「涙?」

「そう、涙。

魔女の流した新鮮な涙を飲めば
かけられた呪いの苦しみから解放されると言われている。

ね、だから
君の涙ちょうだい。」

アビーは手を合わせてイシュにお願いした。

「涙なんて生まれてこの方322年間、一度も流したことなんてないわ。

私なんかより、他をあたった方がいいんじゃない?」

「えー、そんなぁ・・・

世界中の魔女を探し歩いて300年。
今まで199人の魔女に出会って、その度にみんなにお願いしてみたけど
いずれの魔女も答えはNO。

ひどい時なんて、まともに話も聞いてもらえずに
ホウキで追いかけまわされたことだってあるんだから。」
< 241 / 345 >

この作品をシェア

pagetop