エゴイズム。
再び、腕時計のアラームが機械的な音を奏でた。

日差しが少し眩しくて邪険に目を細めるが、暖かい空気が俺を包んでいるためか少し和んだ。

屋上の柵からミドリ広場を覗き込むとミドリ広場の芝生の上に設置されたパイプ椅子に沢山の人が座っているのが見えた。

屋上から見ると人の頭部が見える、まるで碁盤に黒い碁石がぎっしりと並んでいるようで窮屈そうだなと思った。

市民が座る前方のステージに司会らしき人物が姿を現した。
どうやら、仲西議員の演説が始まるらしい。

すると、仲西議員が愛想を振りまきながらステージに姿を現した。
仲西議員の後方には秘書と仲西雄大が金魚のふんのように並んでステージに姿を現した。

この状況からすると仲西議員はかなりの支持率を持つ議員なんだろう。

しかし、あと数分後には市民の歓声は悲鳴に変わるだろう。
信頼していた仲西議員の悪行の数々を仲西雄大の告発によって知る事になる。

そして、仲西雄大は俺によって射殺される、市民は恐怖心や不信感で支配されるミドリ広場を目の当たりにしてしまうだろう。

そんなことを思っていたらステージの中央に設置された教壇に仲西議員が立ち、マイク越しに喋り出した。

「地獄絵図の始まりだな」と俺は思った。


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