【短編】ウラハラ
外は夕方よりも寒かった。
刺すような冷たさではないけど、車内との温度差に身震いする。
外には私たち以外誰もいない。
この時間だからか飛行機が飛ぶ音もしない。
すごく静かだった。
柏木さんの吐き出す煙がゆっくりと暗やみに溶けていく。
「よく来るんですか?」
柏木さんはちょっとだけ私を見て、あぁ、と微笑んだ。
「でも女の子と来たのは初めてだよ」
腰くらいの高さの柵にもたれて私の方へ向き直る。
私は少し間を開けて柵に手を掛けた。
柏木さんの視線を感じながら気付かないふりして私はジッと遠くの飛行機を見る。
何でそんなこと私に言うんだろう。
柏木さんが誰と来ても私には関係ないのに。