『Badend Story〜2人のジャンヌ・ダルク〜』(歴史ダークファンタジー)
すると、続けてローはこう言った。



『それとなぁ、ジャンヌちゃん』


『ジャンヌちゃんに一つ聞きたい事がある。』


『聞きたい事?』


『ジャンヌちゃんはさっきから“普通”“普通”って言うけど…逆に、ジャンヌちゃんにとっての“普通”って何だ?』


『普通?』


『俺からしたら普通という言葉程不安定な言葉は無いと思うけどね』


『不安定な言葉?…』


『俺はなぁジャンヌちゃん“人”ってのは見た目もそうだが、見た目以上にその人“個人、個人の考え方が違うのが当たり前”だと思ってる。』


『自分は自分、人は人。だからこそいろんな奴が居て、いろんな奴と出会って。だから楽しいんだと思ってる。』


『まぁ確かにな。』



俺はそのローの意見に賛同した。


するとローはこう返して来た。



『だろ?…なら、何で皆違う筈の人々の中から普通なんてものが生まれるんだ?』


『その普通ってのは一体誰が決めたんだ?』


『普通ってのはただ単に、“大多数の意見”に過ぎない。』


『そんな知りもしない様な奴らや、会った事すら無い様な奴らも含む大多数の意見で作られた普通と言う檻から抜け出せない内に、自分自身の考えすら流されちまう。』


『俺はそんな不安定な普通なんかに捕われるより、よっぽど普通からはみ出して自分自身として生きていく方を選びたいけどな』


『そして、その普通よりも不安定な言葉が噂って奴だ。』


『他人から聞いた事をまた他の誰かに話す。』


『自分で見てもいない事を、見たかの様に話す。』


『時には、有りもしない事すら他人に話す。』


『ジャンヌちゃんも言ったよなぁ?この時代の人から俺の噂を聞いたって…』


『一体、どんな噂を聞いたんだ?』



ローはそう言うと、俺の返事を待った。
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