記憶 ―夢幻の森―
「そうそう!キース、変なしゃべり方するよね!」
『なぁ~!変だよなぁ~?』
そう言って二人も笑った。
そうだった。
今の俺は少年なんだ。
この細い声で、昔からのこの話し方では、さぞ不自然だろう。
どうも自分を偽る方法が甘い。
昔から…隠す事は得意でも、嘘は突き通せない。
そもそも、自分を本気で偽ろうという気持ちはあまりなかった。
俺は、俺なんだ。
これが、俺なんだ…
…言ってしまおうか?
受け入れてくれるか?
ハルカの笑顔は消えないか?
恐いのは、それだけだ。
別に、他に失うものはない…
俺は、その場で固まった。
「でも、あたし好き~。キースの話し方、なんかホッとするもん!」
ハルカがそう俺の顔を覗いた。
俺の緊張を一瞬で解く。
なんて力のある笑顔だろう。
ははっ…、と俺も笑った。
そんなハルカを父親は愛しそうに見つめると、優しく微笑んだ。
「…初めて出来たお友達だなぁ?ハルカ。」
ハルカは満面の笑みを返した。
コンも嬉しそうにブンブンと尻尾を振った。