記憶 ―夢幻の森―

「そうそう!キース、変なしゃべり方するよね!」

『なぁ~!変だよなぁ~?』

そう言って二人も笑った。


そうだった。
今の俺は少年なんだ。

この細い声で、昔からのこの話し方では、さぞ不自然だろう。


どうも自分を偽る方法が甘い。
昔から…隠す事は得意でも、嘘は突き通せない。

そもそも、自分を本気で偽ろうという気持ちはあまりなかった。

俺は、俺なんだ。
これが、俺なんだ…


…言ってしまおうか?
受け入れてくれるか?
ハルカの笑顔は消えないか?

恐いのは、それだけだ。
別に、他に失うものはない…

俺は、その場で固まった。


「でも、あたし好き~。キースの話し方、なんかホッとするもん!」

ハルカがそう俺の顔を覗いた。
俺の緊張を一瞬で解く。

なんて力のある笑顔だろう。
ははっ…、と俺も笑った。


そんなハルカを父親は愛しそうに見つめると、優しく微笑んだ。


「…初めて出来たお友達だなぁ?ハルカ。」


ハルカは満面の笑みを返した。

コンも嬉しそうにブンブンと尻尾を振った。

< 45 / 221 >

この作品をシェア

pagetop