風のおとしもの。



「もういい時間だし、帰る?」

「あ、はい」


俯けていた顔を上げると、針は6時を指していた。
美紀さんの家からうちまでは少し距離があるので、そろそろ帰らないとおばさんが心配してしまう。
教材を片付けていると、美紀さんは席を立った。


「ちょっと待っててね」

「?……はい」


小さく手を振られ、一人取り残される。

特にすることもなかったので改めて部屋を見回す。
それにしても、女の子らしい部屋だなぁ。
入った瞬間からピンクでぬいぐるみの山で、キラキラにヒラヒラに素晴らしかった。


「お待たせ~♪」


ガチャリと扉が開き、美紀さんが戻ってきた。


「今日のお礼☆」

「えっ」

「美紀が好きなトコのクッキーちゃんでーす☆」


じゃじゃーんという効果音付きで渡された。
愛らしく丁寧に包装されていて、開けるのが勿体なく感じる。


「すっごく美味しいんだから!味わって…―――」


アラザンが光って綺麗。
シンプルな形なのにスプレーのチョコや様々な色のクッキーが入っている。
この小さな袋の中は、お伽話の世界が詰まっているみたい。
私が頂いてしまってもいいのでしょうか。


「……雛ちゃん?」

「…ぁ、はい」

「気に入らなかった?」

「そんな!すごく、すごく嬉しいです」

「そ?ならいいんだけど」

「ありがとうございます」


ぼーっとしてたみたい。
慌ててお辞儀すると、美紀さんはにっこり笑った。



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