風のおとしもの。


「雛ちゃんちょーウケるんだけど!」


意外にも笑い声が聞こえてきた。
美紀さん……?


「いっつも絵文字とかつけないくせに、テンション上がりすぎ!」


きゃははっという甲高い笑い声に、自分が送ったメール内容を思い返す。
そんなにおかしかったでしょうか?


「はぁー………で、どこ行くのよ?」


ひとしきり笑い終えた美紀さんは、冷やかすように聞いてきた。


「美術館です」

「…は?」

「だから、美術館です」

「はぁあぁ!?何それぇ!?」

「み、きさん、耳痛い……」

「よりによって初デートが美術館!?ありえない!」

「でっ!デートじゃありません!」

「じゃなくても美術館はないでしょ!!」

「うっ……でも村井君はいいって…」

「そんなの嘘に決まってんじゃん!」

「うそ…」

「雛ちゃんに合わせてくれたんだよっ」


確かに、村井君なら考えられます。
……そっか、そうだよね。
嫌ならなしにする、なんて言っても、村井君は優しい人だからそんなことしない。


「もーっ、美紀に相談してくれればいいデートコース教えたげたのに」「

だからデートでは…」

「シャラップ!」


美紀さんの声がキーンと耳を突き刺す。
思わず携帯を放り出しそうになった。


「あーんな嬉しそうなメール送っといて、今更しらばっくれるなんて無しでしょ」

「けど、村井君はお友達だって…」

「何、フラれてんの?」

「まずそういった話題になったことがありません」

「まぁでも、まだ友達なんだ」

「はい」

「ふうぅーん」


甘ったるい間延びした声。
にまにま笑う美紀さんの表情が目の前に見えるようです。


「美術館なんかに付き合ってあげる辺り、脈無しではなさそうだよねぇ…」

「なんですかっ」


ボソボソと独り言を言い始める美紀さんに問い返す。

< 349 / 382 >

この作品をシェア

pagetop