風のおとしもの。



     ***



「うぅ…意外と難しいなぁ」


姿見に向かい、浴衣に着替える。
……と言っても、形がぐちゃぐちゃなんですが…。

お祭り当日になって練習を始めてみたけど、とても着れそうにありません。
こんなことならもっと前から練習しておけばよかった。
浴衣……甘くみてた。


「はぁ…」


肩が凝ってしまったので、一旦休憩に入る。


「……私服で行くしかないかな」


本日何度目かのため息をつく。
待ち合わせは夕方より少し早めの時間。
今はまだお昼前ではありますが……。


「はぁ…」


無理だろうなぁ…。


「ひーちゃん、今日のお昼何がいい?」


一階からおばさんの声がする。

あー……。
部屋片付けないと。
こんな汚い部屋、見られては大変です。


「おばさんと同じものをお願いします」


とりあえず部屋から出て一階に向かう。
階段の下にいたおばさんに返事する。


「いつもすみません」

「あらあら、それは言わないでって言ったでしょ?」

「あっ……えと、いつもありがとうございます」

「うん」


ニコニコ。
嬉しそうにするおばさんは、俯く私の頭を撫でてくれる。

おばさんに撫でてもらうのは嫌いじゃない。
優しくて、暖かくて、気持ちいい。

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