風のおとしもの。



ぐちゃっ。
あれこれ散らばったひどい部屋。
髪も結い上げようと思って櫛やピンもそのまま。
下駄の入った箱も蓋を開け、下に着るものがぐちゃりと投げだされている。

浴衣はシワにならないようにしてあるものの、他が壊滅的だった。


「おばさんごめんなさい、いつもはこんなじゃないんです!」

「あらあら」


慌てて片付け始める。
馬鹿、おばさん呆れてるよ!
いつもは見られても大丈夫なようにしてあるのに、こんな時だけ見られるなんて。


「これから使うんだからそのままでいいじゃない」

「でも、」

「大丈夫」


散らばったピンをケースに戻し、バタバタと片付ける。
言い訳もそこそこに忙しなく動いていると、おばさんにゆっくりとした動きで止められた。


「ひーちゃんの部屋がいつも綺麗にしてあるの、ちゃんとわかってるよ」

「……はい」

「それにね、ちょっとくらい散らかしてたっていいのよ?」


おばさんに止められていた手から力が抜ける。


「ここはあなたの部屋なんだから」


ね?と手を握られて言葉に窮する。
顔を上げれば笑顔のおばさんがいるのは想像出来たけど、それをしてはいけない気がした。


「………はい」

「ふふふ、じゃあ始めようか」


おばさんの手がゆっくり離れて、ベッドに投げ出された浴衣を触る。
その時になってやっとおばさんの顔が見られた。


「あら可愛い」


やっぱりニコニコしていて、ちょっとホッとした。


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