風のおとしもの。




「まぁまぁまぁ」


頬に手を当てるおばさんは、いつもより楽しそう。
思ったより難しかった……。

おばさんに指導してもらい、なんとか一人でも着れるようになりました。


「上手にできたわね」

「はい、ありがとうございます」

「んー……でも、やっぱり私が着せてあげる」


あれ…結構上手く出来たと思ったんですが。
ゆるゆると帯を解かれてしまう。


「ダメだったでしょうか?」

「ううん、そうじゃないわ」

「?」

「うふっ、やっぱり私が着せてあげたいと思ったの」


ダメかしら?と小首を傾げられてしまう。
ダメだなんてそんな。
私はおばさんに言われるまま動いた。


「あの子はこういうの嫌がったから、着せてあげることがなくてね」


あの子って…。
お母さんのことだよね。

……確かに嫌がりそう。
好きなことだけやるような人だったから、こんな動きにくいもの着たがりそうにない。


「成人式だって必死に口説いてね。写真撮る間だけでいいからって」

「お母さんらしいです」

「撮り終わったらさっさと脱いじゃって……もう、本当にどうしようもない子だったわ」


その場面が目に浮かんで噴き出す。
若い頃からお母さんはお母さんだなぁ。


「だから今ひーちゃんにこういうことしてあげられて嬉しいわ」


きゅっと帯が結ばれる。
お腹が圧迫される感覚に一瞬目を細めた。


「……ありがとうございます」


姿見を覗くと、さっきとは見違えて整っていた。
おばさんにやり直してもらえてよかったです。

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