風のおとしもの。



「ふふ、この浴衣にも合うと思うの」

「………あの」

「なぁに?」

「それ、私………」

「?気に入らなかったかしら」

「いえ、すごく可愛いです。そうじゃなくて…」


付けられない。
そんな大切な物。


「やっぱり髪はこのままで―――」
「雛ちゃん」


厳しい声がした。
鏡を見るとおばさんが見たことないくらい苦い顔をしてる。


「この家では、何も遠慮することはないのよ?」

「っ………」

「あなたは私たちの家族なんだから」


櫛を置くと、おばさんは膝をついて私を見上げた。


「あの子のことも、雛ちゃんが気負うことはないんだから―――」
「私がいけなかったんです」


辛そうな顔。
みんな私を見ると息苦しそうに顔をしかめる。
そんな表情をさせて、同情までしてもらうなんて出来ない。


「私が、お母さんを追い詰めたんです。お母さんは優しいから、私を許してくれました」

「でも、やっぱり私がいけなかったんです。私はおばさんやおじさんに怨まれて当然なんです」


眩暈がする。
おばさんの方見れない。
例え罵詈雑言投げつけられて殴られたって構わない。
おばさんを、おじさんを、そしてお母さんを苦しめる私なんて、いらない。

< 357 / 382 >

この作品をシェア

pagetop