この世界で二度きみを殺す
僕の顔面にタオルが覆い被せられ、少し乱暴に涙を拭われる。




「…ちさとは幸せだったよ。そーたにあんなに大事にされて」



姉さんの声が、心なしか震えてるように聞こえる。




「これ、あたしの幸せなんじゃないかなって、ちょっと錯覚しちゃうくらいだった」



そうして、僕ら以外誰もいない病室に、鼻をすする音が響く。




「ちさとが口癖みたいに言ってた、"そーちゃんが死んだら自分も死ぬ"って言葉。
あれの続き、聞いた事ある?」


「………」


「"そーちゃんには自由でいてほしい"って。ちさとに縛られることなく」


「…………」




知ってる。



だからあの時のちさとと、砂になってしまったちさとが混じり合って、僕を拒絶する。


いなくなったちさとが、"こっち来ちゃだめだよ"って、優しく咎めているようで。
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